
『フェアな関係』
著 兼桝綾
定価 1700円+税
ISBN978-4-907053-58-1
地元と東京、仕事とジェンダー、恋愛、セックス、結婚。この社会にいる女性たちの自我を描く兼桝綾、第一小説集。
『仕事文脈』で発表していた小説が話題、なかでも表題作「フェアな関係」は大きな反響を呼び、書き下ろし続編を加え緊急書籍化!
東京に住み、働き、さまざまな葛藤をいだく若い女性たちにぜひ読んでいただきたい小説集です。装画は『バクちゃん』『花四段といっしょ』で人気の増村十七さん。かわいくも不穏さが漂い、内容を表しています。
私は一気に喋った。セックスがしたいこと。セックスはしたいけど子どもがほしくないこと。自分の体調が悪くなるのが嫌だし、仕事の時間が奪われるのも嫌だし、そもそも子どもというものを愛せると思ったことが一度もないし、とにかく全部嫌であること。夫はサンダルの片方を持ったまま呆気にとられていたが、「そんなに嫌なのに、何で、子どもいてもいいかもねって言ったの……」と当たり前の疑問を呟いた。私はもう、今更隠し立てすることもないので、あたりも憚らず叫んだ。
「だから、有紀君に嫌がられないセックスがしたかったからに決まってるじゃん!」(「フェアな関係Ⅲ」より)
目次
フェアな関係
避難訓練
魔女の孫娘たち
東京より速く遠く
フェアな関係 Ⅱ
冬闘紛糾
私より運命のひと
スイミング・スクール
フェアな関係 Ⅲ
装丁 小川恵子(瀬戸内デザイン)
装画 増村十七
四六判ハードカバー・152ページ